「自信をつけたい」とコーチングを受けても苦しくなるのはなぜ?
自信のない土台の上に言葉で鎧を作ると、やがて崩れてしまいます。
本当の強さは“心の土台”を整えることから始まります。

「自信がない人がコーチングを受けると、なぜうまくいかないのか?」
「自信をつけたい」と思ってコーチングを受けたけれど、しばらくするとまた同じ悩みに戻ってしまう。
そんな経験はありませんか?
「前向きな言葉を唱えよう」「できる自分を信じよう」——そうやって励ましの言葉を重ねても、ふとした瞬間に胸の奥から「でも、私なんて」という声が聞こえてくる。
どれだけ理想を語っても、どれだけポジティブに装っても、根っこの部分が変わらないままでは、また同じところをぐるぐる回ることになるのです。

■ 自信がない「土台」の上に、言葉で自信を積み上げている
コーチングでは、「どうなりたいか」「どんな自分でいたいか」を明確にし、その目標に向けて行動を促します。
一見、前向きで建設的なプロセスに見えますが——もしその人の「土台」が“自信のなさ”でできていたとしたら、どうなるでしょう。
イメージしてみてください。
ぐらぐらと不安定な地盤の上に、立派な建物を建てていくようなものです。
表面上は綺麗に仕上がっても、土台そのものが脆いままでは、少しの揺れで崩れ落ちてしまいます。
「自信がない自分」がベースのまま、「自信がある自分」という言葉を積み重ねていくと、やがて“言葉の鎧”ができあがります。
その鎧は、一時的には心を守ってくれます。
人から批判されても、「私は大丈夫」と跳ね返せる。
でも、ふと誰かの一言や過去の記憶に触れたとき、鎧の下に隠していた「本当の不安」や「自己否定」が揺れ動き、あっという間に崩れてしまうのです。

■ 「昔の自分」が顔を出す瞬間
鎧が壊れた瞬間、思い出すのは“昔の自分”。
自信がなくて、評価を気にして、人の顔色をうかがっていた頃の感覚。
「やっぱり私には無理だったんだ」——そんな声が、また頭の中で響き始めます。
この現象は珍しいことではありません。
心の奥にしまい込んだ“根っこの自分”が、実はまだ癒えていないからです。
どんなにコーチングで「目標を明確にしよう」「思考を変えよう」と頑張っても、
“感情”の部分が未処理のままだと、またその根っこが顔を出してくる。
だからこそ、コーチングでは本当の意味で「自信」を育てることは難しいのです。
「行動を変える」ことはできても、「存在そのものへの信頼」を育てる領域までは、手が届かないことが多いのです。

■ 必要なのは、“心の土台”を整える時間
自信は「作るもの」ではなく、「思い出すもの」。
あなたの中にもともとあった安心感、信頼、希望——それらをもう一度取り戻すプロセスが必要です。
それは、カウンセリングや内省の時間のように、
“できる自分”を目指す前に、“今の自分”をまるごと受け止める段階。
人に頼るのが苦手な人ほど、ここを飛ばして「頑張って変わらなきゃ」と思いがちです。
でも、変わるために必要なのは、努力ではなく安心です。
心が安心したとき、人は自然と変わり始めます。

■ 「弱さを隠さない」強さへ
40代になると、キャリアも家庭も、人間関係もある程度形ができてくる。
でも、その分「弱音を吐けない」「完璧でいなければ」という思いが強くなる。
そんなとき、コーチングの言葉は時に“励まし”ではなく、“プレッシャー”になります。
本当の強さは、鎧を固めることではなく、鎧を脱ぐ勇気を持つこと。
「自信がない」と言える自分を許すこと。
そこから初めて、自分の本当の力が戻ってくる。

■ まとめ:自信は「取り戻す」ものであり、「作る」ものではない
コーチングは、すでにある程度自分を受け入れられている人にとっては、非常に有効なツールです。
でも、まだ「自信がない自分」を責めてしまう段階では、
まず心の土台を整える時間が必要。
誰かに話す。
泣く。
思いを言葉にしてみる。
それだけでも、少しずつ“自分を信じる感覚”が戻ってきます。
その上で、初めてコーチングは力を発揮します。
「自信がない私」を否定するのではなく、
「それでも歩き出せる私」を見つけるためのステップとして。
あなたの中の「本当の自信」は、
誰かに教えてもらうものではなく、
あなたの内側にずっとあった光に気づくことから始まります。

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